義理じゃないチョコ、あげます。
「義理チョコだからね…っ」
精一杯の、照れ隠し。
可愛い子だったら、ここでこんなこと言わないんだろうけど。
私には、無理です…
「あー…うん。カナの食べられんなら、なんでもいいぞー」
またそういうことを…っ
最初の間が気になるけど、どうしてそんなにさらっと言うの。
これで無自覚だから、本当にタチが悪い。
「カナ、あたしのも忘れないでね?」
「あ、俺もな」
2人はやっぱりニヤニヤしながら、こちらを見ていて。
「当たり前でしょ、バカ!」
もうそろそろ勘弁してほしい。
顔の熱が冷めて、やっと顔を上げる。
それでも仏頂面の私を見て、ヒロが吹き出した。
「なんて顔してんだよ、ほら、笑えー!」
ヒロは両手で私の頬を挟み、ぐりぐりし始める。
ほんと、誰のせいだと思ってるんだ。
ヒロはそのまま、私の顔で遊びながら。
「カナのチョコ、楽しみだなー」
楽しそうな顔で笑った。
そしたらもう、全部どうでもよくなって。
「…ふふっ。じゃあ、頑張って作るね」
私もまた、笑顔を見せた。
「なんであれで付き合わないの…?」
「いや知らねえよ」
2人がそんな話をしているなんて、知らずに。