義理じゃないチョコ、あげます。
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「…で?」
「え?」
「ほんとに義理チョコにすんの?」
その日の昼休み。
アキがモグモグと口を動かしながら、私に問いかけた。
アキって細いのに、よく食べるよね…と思う。
「だって…告白なんて、できないし」
「去年もそれ言ってた」
「う…」
たしかに、去年渡したのは義理チョコだったけれども。
「…今までずっと友達で、急に告白なんて」
「じゃあ、彼女できてもいいんだ?」
「…それは」
…嫌だけど…
でも、もし告白して、今の関係が壊れたら。
そう考えたら怖くて、なかなか一歩が踏み出せない。
「…はあ。カナもわかってるでしょ?ヒロのこと、みんなが放っておくわけないって」
と、アキがどこかを指差す。
その先を追うと、数人の女の子が、ヒロたちを囲んで話をしていた。
ヒロは、時折楽しそうに笑ったりして。
もやっ…と、胸に広がる黒いもの。
「一丁前に焼きもち焼くくせに」
「…」
「取られちゃっても知らないよ」
なんだか、今日のアキは厳しくて。
私はただただ縮こまるばかり。