義理じゃないチョコ、あげます。


*****




「…で?」


「え?」


「ほんとに義理チョコにすんの?」








その日の昼休み。


アキがモグモグと口を動かしながら、私に問いかけた。




アキって細いのに、よく食べるよね…と思う。




「だって…告白なんて、できないし」


「去年もそれ言ってた」


「う…」




たしかに、去年渡したのは義理チョコだったけれども。




「…今までずっと友達で、急に告白なんて」


「じゃあ、彼女できてもいいんだ?」


「…それは」




…嫌だけど…




でも、もし告白して、今の関係が壊れたら。


そう考えたら怖くて、なかなか一歩が踏み出せない。




「…はあ。カナもわかってるでしょ?ヒロのこと、みんなが放っておくわけないって」




と、アキがどこかを指差す。


その先を追うと、数人の女の子が、ヒロたちを囲んで話をしていた。


ヒロは、時折楽しそうに笑ったりして。




もやっ…と、胸に広がる黒いもの。




「一丁前に焼きもち焼くくせに」


「…」


「取られちゃっても知らないよ」




なんだか、今日のアキは厳しくて。


私はただただ縮こまるばかり。



< 5 / 40 >

この作品をシェア

pagetop