義理じゃないチョコ、あげます。
なおも沈黙を貫く私に、アキは痺れを切らしたよう。
「カナがいいんならあたしはもう何も言わないよ」
そう言って、またご飯を食べ始めた。
私の箸は、止まったまま。
真っ黒な感情が、頭の中を支配する。
ヒロが、他の女の子に笑いかけてる。
それだけで、なんだかもやっとして。
ヒロが、他の女の子と付き合う。
それを想像するだけで、胸がはち切れそうに痛い。
「…嫌だよ」
思わず、本音が溢れるくらいには。
「カナ、いいの?」
そんな私の気持ちを汲み取って、アキが再度、問いかけてくれる。
アキはなんだかんだ言って、いつも私のことを考えてくれるから。
「…アキ」
「んー?」
「…私、決めた」
「うん」
アキの気持ちに応えるためにも、頑張らなくちゃ。
ヘタレな私は、卒業するんだ。
「私、ヒロに、義理じゃないチョコ、渡す…!」
たどたどしい私の宣言に、アキは満足そうに微笑んでくれた。