恋愛短編集 あの日の1ページ
なーんて。あり得ない妄想。本当は近所に八百屋さんなんてない。そもそも電車通学だし。最寄り駅から学校までは一直線だし。ていうかパンくわえて外走るってけっこう勇気いる行動だよね...。
なんて図書館で見かけた少女漫画を見つけてから膨らみ出した自分の妄想にツッコミを入れつつ本棚の間を歩いていた。図書館にいると静かで勉強は集中できるけど妄想も捗ってしまう。ふと立ち止まって本棚の真ん中あたりで気になった本に手を伸ばした。すると
「あっ、すいません」
思わず少し手を引く。隣にいた人と偶然同じ本に手を伸ばしてしまった。
「いえ、こちらこそすいませ...」
顔を見て思わずかたまる。今ハマっているドラマの主人公そっくりの美少年。あった、少女漫画みたいな素敵な出会い。高鳴る胸がそう教えている。