クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
December~はじめてのクリスマス
「やっと……だ」
スーパーに併設されたATMで通帳に記載された数字を見た私は、口元が綻ぶのが押さえられない。
今日の日付で増えた六桁の数字。
今まで働いてきて初めて見る金額に、安堵のあまり涙が出そうになる。
(よかった……これでやっと葛城さんにお返しできる)
とりあえず入金された金額の半分を下ろして封筒に入れる。本当なら全て渡したいところだけど、今まで全部彼に負担して頂いてきた細かな出費の代わりと、それから新しい部屋を借りる時にお金が無いと始まらない。
ATMのそばには求人や地元情報誌なんかのフリーペーパーが置いてある。当然ながら、私は賃貸情報のフリーペーパーをあるだけ手にした。
(新しい部屋を早く探さないと……)
たちまち生まれる焦りに近い感情は、つい最近葛城さんが女性に誘われていたから。
彼はハッキリと断っていたけれど、きっと他にもいるはず。葛城さんを好きな人が。
三辺さんのことが忘れられない今は、まだまだ応じる気にはなれないだろうけど。時間が経てば……彼も新しい恋をするだろう。私自身にそれほど長くお世話になるつもりはなくとも、恋はいつ訪れるかもわからない。
本当にものの例えだけれど。たとえば今、葛城さんが違う女性を好きになったとしたら。
(私は……邪魔にしかならない)
3日後は祝日でクリスマスイヴの前日。だけど……私はいても良いのかな? 葛城さんのアパートに。