クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
男性特有の硬い体と強い力に、肌が粟立ち寒気に似た感覚が背中を伝う。
「あ……あの離してっ!」
懸命に手を突っ張って離れようともがいても、自分以外の手で体が自由を奪われたままなのを感じて、全身が強張った。今まで何度も感じたことがある恐怖を思い出して、自然と涙が滲み出す。
「う……っ」
止めようと思うのに、勝手にこぼれる涙は止まらない。戦慄いた唇から嗚咽が漏れたのは程なくしてで、涙が音をたてて落ちた時。私は葛城さんの腕から解放されていた。
「やはりな……君は、男慣れなどしていない。むしろ何の経験もないだろう?」
「…………」
なぜわかったのかと疑問に思うより前に、葛城さんは確信を持ったように言い切った。
「おそらくその息子とやらは自分が言い寄って、相手にされなかった腹いせでありもしないことを親に告げて君を辞めさせたのだろう。自分のプライドのためにだろうが、どちらがくだらないかは一目瞭然だ」
そして、彼は更に私にこう告げた。
「どうやら、君は今までろくな人間……特に男に関わったことがないらしいな」