クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「面白いな」
「も、もう……まだ言うんですか?」
また胸を軽く叩こうと腕を上げると、その手は葛城さんに囚われた。
「君は、まだ仔犬を気にしてるんだろう?」
今までのふざけた顔つきから一転して、彼の真面目な眼差しに心臓がドキッと跳ねた。
「は……はい。でも……私ではとてもお世話をしてあげる力がありませんし」
「同病相憐れむというやつか」
「え?」
「あの仔犬と君は同じだ。違うか?」
葛城さんの言う通りに、身寄りがなく明日も知れないという点では同じ。繕っても仕方ないから、ゆっくりと頷いた。
「オレは、金銭的な余裕だけはあってな。使い道に困るほどだ。まぁ軽く億単位の金額で財産がある。ちなみにこの近辺にある十棟のメゾネットアパートもすべてオレがオーナーだ」
「はぁ……すごいですね?」
なぜ金銭的な話をされるのかがわからなくて、とりあえずそう言っておけば。また葛城さんが噴き出した。
「ククッ……やっぱ、いい。おまえ、最高だ」
おまえ? 今まで君呼ばわりだったのに、と不思議に思って首を捻ると。急に葛城さんに抱きしめられた。
「気に入った。仔犬とともにおまえを飼ってやるよ、ペットとして。好きなだけいればいい」
「はぁ……ペットですか? 何をすればいいんでしょうか」
ますます意味がわからなくて彼を見上げると。急に彼の顔が近づいて、唇を柔らかい感触が掠めた。
「好きに生きろ。それだけでいい」
愉しそうな葛城さんの声は、まるでお気に入りの玩具を見つけた子どものようでした。