クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「言っただろう。今のおれはおまえだけだ、と」
「………」
「今まで、おれに恋人などいたことはない。これからも作る予定もない……そばにいて欲しいのはおまえだけだ」
絡まる指に力強さが増す。けれど、ときめきはすれど気分が上向くことはなくて。ただただ重い気持ちが増して、沈み込んでしまう。
確かに、葛城さんは彼なりに誠心誠意言葉を尽くしてくれてるだろう。何も知らない昔の私なら、無条件で信じて頷いたかもしれない。
だけど、今は。
数ヶ月の私とは違う。恋や温かさやしあわせを知って、同時に醜さやいろんな負の感情を知った。人間として自分や他の人たちを理解してきた。
だから、葛城さんの言葉は心に響かずに上滑りする。
だって……
彼からの、言葉がない。
“葛城 智基”が、“加納 夕夏”をどう思うのか。どうしたいのか。
別に、熱烈な愛を告白して欲しいとは思わない。ただ……ただ、好きか嫌いか。それだけでもはっきりと明かして欲しかった。
今の彼は、自分の胸の内をすべて明かしていない。私はこれだけ自分をさらしてるのに。
私は、それだけ信頼するに足らない……軽い存在と見られてるの?
これで、信じろなんて無理だ。
また、新しい涙がこぼれおちた。