クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~


リアルな恐竜のフィギュアはただの爬虫類にしか見えなくて、トカゲが不得手な私は正直な話ちょっと苦手。だけど……好きな人が選んでくれ、と言ってくれたんだ。


(私が選んだものをずっと持っていてくれる……なら、頑張って見てみよう)


意を決してフィギュアを眺める。シワシワの表皮や牙が並ぶ口とか小さな目とか……あまり正視したくはないけど、彼のためだと言い聞かせて見比べた。


そして、私が選んだのは緑色をベースにしたフィギュア。恐竜=緑色、なんて単純なイメージからだった。


「これが、いいと思います……私は、ですけど」

「そうか……」


微妙に視線を逸らしながら告げるなんて失礼な態度なのに、なぜか葛城さんは嬉しそうだ。そんなに喜ぶ理由がわからなくて首を捻ると、彼はそのフィギュアを手に取りさっさとレジに持っていった。


……私のかごにあった商品と一緒にお会計を済ませられた、と気付いたのはそれを入れた袋を渡されてから。


「か、葛城さん……ちゃんとお支払いします!」

「いい。今日はおれが無理に誘ったくせに、予定を変えたりと勝手だったからな。お詫びのつもりで受け取ってくれ」


(そんなの気にしないでいいのに……私だって葛城さんと思い出が作れるなんて……身の程知らずな望みを抱いたんだから)


葛城さんは悪くない。むしろ、私が彼をあれこれ振り回してしまっているというのに。


葛城家のことだって……。


でも、ここで遠慮し過ぎたらかえって嫌みになる。だから私は、ありがとうございます、とありがたく頂いておいた。


< 229 / 280 >

この作品をシェア

pagetop