クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
November~歓迎会
「加納、チェックは最低限二度しろと言わなかったか? ほんのちょっとしたミスが二度手間となり、後々もっと時間を割かねばいけなくなる。そのリスクを考えればどうすれば良いのかわかるだろう」
オフィスの一角――上座の机の上。パチンと指先で弾かれたのは、私が今しがた仕上げて提出した書類。さも不要と言わんばかりに机の端に返されたものを、震える手で恐る恐る手に取る。
「それがきちんと終わるまで昼休みは取るな。いくら教育担当の者が休みだろうと、初歩レベルの仕事を仕上げる程度のスキルがなくては困る」
「は、はい……」
ようやく振り絞った声は蚊のような、弱くて細々とした返事しか出せない。
威圧感のある冷たい視線と厳しい口調に、膝まで震えがくるけれど。しっかりしろ! と自分を叱咤して、グッと床を踏みつけた。
せっかく採用して頂いたのに、期待に応えられない自分が悪いんだ。だから、頑張って何とかしなくっちゃ。唇を噛み締めると、目の前の上司の冷たい瞳を見据えて頭を下げた。
「す、すみませんでした。今から急いで修正します」
書類を手にした私は、自分に与えられた席に戻るとさっきのオフィスソフトを起動させ、もう一度最初からチェックすべく、資料とにらめっこを始めた。