クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
ティラノサウルスのフィギュアを手にした葛城さんは、明らかに上機嫌で。さっきまでの気まずさが嘘のように、よく喋った。
「夕夏は高校のころ、なにか部活はしていたのか?」
「あ、いえ。高校の頃は居候しているお家のお手伝いをしてましたから……けど、クラブには入ってました」
「そうか……どんなクラブだ?」
さりげなく訊かれて、とくんと鼓動が跳ねる。
葛城さんが……私に興味を持ってくれてる。それは予想外の嬉しさで、気づけば勢いよく話し込んでしまってた。
「あの……りょ、料理研究会です。その……私、あまりお料理が得意でなかったので……週一の課外授業であるクラブ活動で、せめて腕をあげようかと考えて……」
「本当か? おまえの料理は全て美味いのに」
ばくん、と心臓が跳ねる。
さらりと出された言葉は無意識に、だろうけれど。だからこそ偽りでなく心からそう思っていてくれる……と。そう言ってくれたようで。
さざめく胸を押さえ落ち着け、と自分を諌めながら口を開いた。
「あ……あの、包丁が上手く使えなかったんです。それに、結構大雑把な性格なんで……ぜんぶ目分量とか、自分の感覚で勝手に作ってたんです。 教えてくれる人がいなかったんで全部自己流で……だから、きちんと基礎から覚えたいって……
しょ、将来……の家族のために……美味しいご飯を食べてもらいたい……って」
語っているうちに、なんでこんなことまで話してるんだろう、と顔に熱が集まった。
将来も何も、まったく見込みがない好きなひとに……。