クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「加納ちゃん、大丈夫?」
さあやるぞ、とキーボードを叩き始めた時。液晶ディスプレイの横からひょこっと顔を出したのは、明るめの茶髪を癖付けしたスーツ姿の男性。たしか加藤さんだっけ? と思い出しながら、「はい」と返した。
「加納ちゃん、新人なのに葛城課長の手厳しいこと~。ま、もっとも。あの課長が優しい場面を僕は見たことないけどさ」
スーツのポケットに両手を突っ込み、屈託なく笑う加藤さんは私より10センチ高いか高くないか、くらいで男性にしてはあまり上背がない。かわいらしい顔だちで朗らかな表情をよくするから、圧迫感が無くて私でも話しやすかった。
「加藤。喋る暇があるなら手を動かせ。明後日の会議に関する資料はどうなってる?」
「はい、はい! 資料ならさっきメールで送ってますからチェックお願いしま~す」
「それはもう済んだ。だが、顧客満足度に関するデータの根拠が甘い。もっと深く確実なデータを持ってこい」
「わかりました!すぐ取りかかりますね」
あくまで私のそばを離れずに手を振る加藤さんは、ニカッと笑う。
「ね、僕らにも厳しいでしょう」
さ、僕も仕事仕事と言いながら加藤さんは自分の席に戻っていく。
葛城さんは眉間にシワを寄せながら、膨大な仕事のデータをチェックし続けていた。