クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
エピローグ~そして、春が来て。
「加納さん、チェックをお願いします」
「わかりました、見せてください」
営業事務課のフロアは年度末ということもあり、今日も多忙で残業決定かなと思いつつ書類のチェックに勤しむ。
「このデータは古いものですから、最新に差し替えてください。Sフォルダにあるはずです」
「わかりました」
私より年上だけど去年入った後輩さんは、素直に言うことを聞いてくれて助かる。
そんな彼女ももうすぐ先輩になる。あと少しで新入社員の研修が始まり、結果次第で配属が決まるから。
私が入社して二度目の春――3月も終わりに差し掛かろうとしてる。
この1年あまりの間、先輩になったり。資格試験に合格したり。いろんなことがあった。
仕上がった書類を持って立ち上がると、数歩先にある一際立派な机の前に立つ。
「課長、明日の営業部会議用の資料ですけど。A物産についてですが……」
「ああ、なんだ?」
葛城課長は穏やかな眼差しでこちらを見遣る。最近は表情が柔らかくなったと評判で、それに従って彼にあからさまな好意を示す女性も増えていた。