クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~





「ま~た新しい勉強始めたの? ホントに真面目だよねぇ加納ちゃんは」


ランチタイムに休憩室でテキストを広げていると、加藤さんが苦笑いしながら隣に腰かける。コンビニの袋からサンドイッチを出すから、おかずが入ったタッパーを差し出すと。ありがと~と言いながら唐揚げを頬張った。


この1年加藤さんは営業課のヘルプで多数の実績を誇り、この春から主任への昇進が内定してる。

ますますモテる彼は多数の女性との付き合いに忙しいと楽しそうにぼやいてた。


「ん~相変わらず加納ちゃんの料理は美味い! ダンナさんになるひとはしあわせだな」

「おだてても何も出ませんよ」


口が軽く調子がいい加藤さんの言葉をいちいち真に受けてたらきりがない。軽くあしらった私は、手元のテキストに視線を戻した。


「う~ん……けど、加納ちゃんのダンナさんってもうほぼ決まりだからねえ」

「そんなことありませんよ……」


加藤さんがまたからかおうとするから、苦笑いを返しておく。


「そうかな? 昼はまったく同じ内容の弁当を広げて、行き帰りは同じ車。同じ家に住んで……休みは仲良くお出かけ。それだけで決まってないっておかしくない?」

「世間ではそうかもしれませんが……私たちはちょっと違いますから」


しあわせに当たり前に暮らしてきた人たちには、きっと理解しにくいだろうなとは思う。加藤さんの言うとおりに、私と葛城さんは恋人同士と言われてもおかしくない暮らしをしてる。


恋人とも友達とも家族とも呼べない不思議な関係……でも。私は、急いでそれに名前を付けてしまおうとは思わない。


彼も、私も。お互いに対等に必要として必要とされているから。


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