クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「加納さん」
聞き慣れない声に顔を上げると、二十代半ば辺りの女性が三人ほど私の横に立ってた。誰も彼も茶色い髪を巻いて、綺麗にメイクをした美人さん。制服からすれば庶務課辺りの社員さんだろう。
「ちょっと用事があるんで、着いてきていただけますか?」
丁寧な言葉とは裏腹に、きつい目をした人が顎で示した先は裏階段の方。誰も彼もが敵意むき出しで、何の用事かは容易に想像できてため息が出た。
「……わかりました、いきましょう」
私があっさり立ち上がると、弁当箱を空にした加藤さんが眉をひそめる。
「いちいち対応しなくていいよ。どうせつまらない因縁つけられるだけでしょ~」
「いいんです。私も覚悟の上で彼のそばにいますから……」
加藤さんに苦笑いで返して、「心配してくださってありがとうございます」と笑顔でお礼を言っておいた。
「私は大丈夫です。これくらい自分でなんとかできないと、あの人のそばにはいられませんから」
「……強くなったね、加納ちゃん」
フッ、と笑顔を浮かべた加藤さんは仕方ないなあと呟いた。
「はい、ではちょっといってきますね」
射殺されそうな視線を受けたので、さすがにまずいなと足を速めて三人の後を追った。