クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「もしも、葛城課長があなたを選ぶなら……私はきちんと身を引きます」
「……」
晶子さんは困惑しながらも考えを整理しているのか、目を伏せながら黙り込んでいる。友達の二人も入り込めない雰囲気を感じたのか、大人しく口をつぐんでいた。
「……本当に、彼が私を選んだら、引いていただけるんですか?」
改めてこちらを見た晶子さんの瞳には、猜疑心が見え隠れしてる。すぐに信じてもらえないのは仕方ない。私と彼女は初対面も同然なのだから。
「葛城課長が誰かを選んだなら、と私はいつでも出ていける用意はしてありますよ」
彼と理解しあえた1年前から、すでに荷物は纏めてある。私物は極力買わない様に、いつでも持ち出せるように整理をして。
それが、自分なりの覚悟を示す方法だった。
「もしも今日、葛城課長とお話ししたいなら、夕食を私がセッティングしましょうか? 葛城課長は和食が好きなのでお座敷があるお店がいいです。一番好きなお店を私が今から予約しても……」
「ちょ、ちょっと!」
スマホを出した私を、なぜかきつめの美人さんが止めた。
「あ、あんた……おかしくない? なんでそこまでするのよ」
「きれいごとに聞こえるかもしれませんが、私自身がしあわせになるよりも、葛城課長にしあわせになってもらいたいからなんです」
私は、本心を隠さずに打ち明けた。