クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
翌朝、5時起きで私はキッチンに立った。
お弁当はお腹がいっぱいになるけれど、食べるのに時間が掛かる。サンドイッチなら片手で手軽に食べられるし、仕事中でも摘まめる。一口で食べられるように、小さく切って中の具も工夫してみた。
あとは、朝ごはんにとフレンチトーストとサラダにポーチドエッグを作りプレートをダイニングテーブルに置く。もし葛城さんが食べなかったら今日のお昼にしようと思いながらチョコの散歩に出た。
リードをつけたチョコは上機嫌であちこち歩き回り忙しない。あれだけ衰弱していたのに、今はすっかり元気で嬉しくなる。
「こら、そっち行っちゃだめ! 泥だらけになっちゃうよ」
「ワン!」
「わんじゃな~い! きゃ!」
何にでも興味を持つチョコは、意外な力強さでリードを引っ張りあろうことか水溜まりに飛び込んだ。当然泥が跳ねて、こちらもしっかり水を被る。
「こら、チョコ! やめなさい……うぷ」
「ワン、ワン!」
慌てて後ろに下がろうとしたものの、そこもぬかるみだとは思わなくて。足を取られた結果……見事に後ろ向きに転んで全身泥まみれに……。
「あらあら、大変なことになってるわね。よかったらうちで汚れを落としなさい」
佐藤さんご夫婦にチョコを預けに行く時、苦笑いされて恥ずかしさのあまり逃げるように葛城さんのアパートに戻ったけれど。
葛城さんは既に出ていった後で、用意した二人分のサンドイッチもプレートもまったく手を付けられた様子はなかった。