クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「加納さんはガッコどこ出たの?」
ガッコ? もしかして卒業した学校のことを訊かれたのかな?と何とか理解した私は、正直に答えた。
「青緑です」
「え、青緑? 聞いたことないな……」
男性は困惑したような声を出すと、質問を重ねてきた。
「ちなみに、どこの大学?」
「あ、ウチも知らない大学だから興味あるな~。もし近かったら合コンのセッティングできなぁい? この前ろくな男いなくてさ~」
昨日私に仕事を頼んできた先輩が、グラスを手に私の隣に座る。合コンの為に仕事を振ったという加藤さんの情報は本当で、苦笑いしそうになるけれど。どこの大学と訊かれても困る。
大学なんて行くのが当たり前みたいな、こんな空気は苦手だった。つまらない劣等感に苛まれて、知らず知らず声が小さくなる。
「あの……大学ではなくて……」
「あ、なら短大? 専門? うち最初から大学志望だったから、その辺り疎くてさ~」
ケラケラ笑う先輩はなんとなくさっぱりしてて、話しやすそう。それでも、彼女の発言でますます体が小さくなった。
「あ、あの……すみません……こ、高校です」
「え、高校? そうなの!?」
信じられないというふうに目を見開いた彼女に申し訳なくて、蚊の鳴くような声で「はい」とだけ返した。
途端に、二人が黙りこくってしまって。気まずい空気が流れたのを肌で感じた。
(どうしよう……)
こんな時に場を盛り返せるようなスキルなんてない私は、ひたすら縮こまってうつむくしかなかった。