クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「葛城さん、お水飲めますか?」
「…………」
手にしたグラスを持たせようとしても、まったく反応なし。口元に近づけても、飲む様子はなくて。ため息を着いた私は、無理やりだけど彼のコートとジャケットを脱がせた。
「シワになりますからハンガーに掛けておきますよ。ズボンは……ご自分で何とかしてください」
コートとジャケットは風通しのいい場所にかけ、シワを伸ばして軽く埃を取り、消臭と除菌のスプレーをかける。宴会の雑多な臭いは早く取るに限るものね。
ダイニングのエアコンと床暖房を調節して、それでも一応風邪を引かせない為にブランケットを持ってきて、彼の身体を包もうとした。
だけど……
いつの間にか右手が葛城さんに掴まれていて、彼は私を見上げていたけれど。
メガネ越しに私を見つめる眼差しは、どこか昏くて。冷えそうな、それなのに奥に青白い炎が見えたような。そんな感じがした。
「おまえは、言ったな。なんでもすると」
「は、はい。葛城さんにはどれだけ感謝してもしきれませんから……私ができることがあればなんでもします」
能面のような無表情に恐さを感じながらも、私は音が立ちそうなほど勢いよく頷いた。
「なにをすればいいですか? おっしゃってください……きゃっ!?」
掴まれた手が引かれて、背中にソファの柔らかさを感じた。え? と目を瞬いた頃には体勢が逆になっていて、いつの間にか私がソファに倒れていて。葛城さんがその前に立って私を両腕で囲みこんでた。
「……なら、慰めろよ」
メガネを外しながらそう告げた葛城さんは、私の顎を掴むとそのまま顔を――唇を重ねてきた。