クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
幸い、すべて木工品で壊れることもなかった。マットが敷かれていたからか、派手な音も立たずにほっとする。
(よかった、目を覚まさなかった)
ちらっと葛城さんを見れば、彼はこちらへ背を向けたまま寝入ってる。ほぅ、と息を吐いて落ちたものを拾うために屈んで手を伸ばした。
けれど、私の手はそれを見た瞬間に止まった。
私の視線の先にあったのは、あのフォトフレーム。焦げ茶色の木製のそれは、一枚の写真がはめられていた。
だけど……それは。
ベッドが軋む音が聞こえて、まさか葛城さんが目を覚ましたかと私は慌てて机に戻し、彼の部屋を飛び出した。一目散に与えられた部屋へ戻り、ドアを閉めるとそこに凭れて胸を押さえる。
ドキドキと激しく脈打つ鼓動の激しさは、走ったからだけじゃない。私自身の動揺もあるからだ。
「……どうして」
あまりの衝撃に、頭がうまく働かない。漏れた言葉に続く声は出せなくて、そのままずるずると床に座り込んだ。
「どうして……葛城さんが……お母さんの写真を持っているの……?」
まだ灯りのつかない暗い室内に、私の小さなつぶやきが儚く溶けて消えていった。