クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
November~休日
「で、サンプルが届いたらこうしてきちんとチェックしていくの。プレゼンの時に使えないと困るから」
「はい」
三辺さんの話をひと言も聞き漏らすまい、と集中しながらメモ帳にペンを走らせる。全てを書き留めるのは時間と紙の無駄だから、要点を絞り流れが解るように。
あまりきれいとは言えない走り書きだけど、とりあえず自分がわかればいい。後は書き溜めたものを週末にでもわかりやすくまとめよう。
もう三冊目になったメモ帳は、一週間に一冊のペースで使い果たしてる。今日が木曜だけどもう残り10ページもない。来週には新しいメモ帳を買わないと……と思いながら、ため息を着く。
ここの会社はお給料の締め切りが月末なのに支給が20日とかなり遅め。だから働いたぶん頂けるのはありがたいけれど、今の私は小物一つ買うのも葛城さんに頼まなければいけない。そのことがひどく申し訳なくて、気分が沈んでしまう。
唯一口座がある銀行にはひったくりの事情を話して、新しいキャッシュカードを作ってもらえた。だけど、最悪なことに預金は既に引き出されていて、残りは数百円しかなかった。
だから私は何から何まで葛城さんの厚意に甘えてしまっている。不甲斐なくて情けないけれど、彼に感謝してきちんと恩をお返ししないといけない。
三辺さんが無意識にお腹に手を当ててしあわせそうに微笑んだ時、ズキッと胸に痛みが走るのを見てみぬふりをした。
私にはきっと訪れないだろう未来を掴んだ彼女が羨ましいとか……そんなことすら思う資格も無いんだ。
私はただのペット、なんだから。