クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
ロッカールームでサンドイッチが入ったランチバックを手に、小さなため息を着いた。
(やっぱり……ダメか)
今朝も、葛城さんに作った朝食もお弁当も手に取られなかった。スルーされているのにこんなことを勝手に続けて呆れられているだろうけど、どうしても見逃せなくて。
年末が近づいたからか、葛城課長の忙しさは増していた。午前様なんてしょっちゅうなのに、誰よりも一番に会社に出る。
彼の能力なら通常そこまでしなくても、多少の残業でこなせるはずだけど。今はそうも言っていられない事情がある。
実は営業二課の課長が少し体調を崩していて、その分他の課がフォローをしている。もともと営業上がりの葛城課長は一番仕事を解っていて、しかも采配が上手い。だから、一番多くの負担が彼にかかってた。
今も、お昼ご飯を食べる様子も無くパソコンの画面を睨み付けてた。手元にあるのは、栄養ドリンクだのクッキーみたいな栄養補助食品。最近はコンビニに寄る時間や食べる時間も惜しんでいる様子。
(絶対、身体にいいはずないのにな……)
お母さんの写真のことは勇気を奮い起こして何度も訊こうとしたけど、顔を合わせる間もなくて家ではすれ違ってばかり。会社では訊けるはずもなく、逆に多忙な彼の身体が心配になってきてた。
栄養不足だろう彼のことを考えて、疲労回復にいい豚肉を使ったカツサンドに、お野菜をたくさん使ったおかずとデザートのフルーツ。バランスを考えたランチバックは、一度も口にされたことがない。
(やっぱり……ペットのくせによけいなこと……だよね)
以前にも言われたのに。会社ではプライベートを口にするなと。それでも未練がましく保冷バックに入れた彼の分のランチ。帰ったら自分の夜ご飯にしよう、と肩を落とした私の背中を叩いてきた人がいて、驚いて振り向いたら。そこにはにっこり笑う先輩の姿があった。