クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「……でね! そういう時はわざと酔ったフリすんの。狙ったオトコの肩にしなだれかかって、身体を軽くタッチしながら“酔っちゃったみたぁ~い”ってね。あ、わざとでも目を潤ませて上目遣い!これポイントね」
……何でこうなったんでしょう?
“ね、加納さんってカレシいるの?”って訊かれたから、いいえと答えただけなのに。なぜか先輩から“合コン必勝の極意!”を伝授されてます。
「いいオトコから売約済みになるから、今だと遅いくらいだよ! 加納さんも早くカレシ見つけないと。シングルベルしたくないでしょう」
拳を握りしめて力説されても、きょとんとしてしまう。なぜ、そんなにクリスマスに向けて焦るのかがわからない。
「はぁ」なんて気のない返事をしてしまったからか、富永先輩は髪を振り乱し頭を抱えた。
「加納ちゃん、無関心すぎ! よし、土曜日にある合コン。ちょうど人数足りなかったから、加納ちゃんも参加ね?」
「え?」
目をパチパチ瞬いていると、先輩はスマホを取り出して「早速連絡連絡」と慣れた手つきでタップし出す。そこで、ふと先輩は「そういえば加納ちゃんの番号と“LOIN”のID知らないから教えてくれる?」と言われて、何のことかさっぱりわからずに困った。
そんな中、突然後ろからニュッと手が伸びてきて先輩が「ぎゃあ」と叫ぶ。カツサンドを掴んだ手は、また戻っていって聞きなれた声が聞こえた。
「加納ちゃんは勘弁してあげなよ。代わりに僕が参加ね」
むしゃむしゃやりながらそう言ってきたのは、加藤さんだった。