クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「あら、愉しそうね」
「あ、三辺さん!」
しばらく三人で歓談していると、休憩室に意外なひとが入ってきた。お昼休憩の時には必ず外出する三辺さんだったから、周りは軽く驚いた様子。
「今日は桜井さんとご一緒じゃないんですか?」
さすがに富永先輩も何年も先輩の三辺さんにはきちんと敬語を使う。先輩の問いに、三辺さんはフフッと笑った。
その笑みを見たのはまだ二回目だけど――どうしてか強い既視感に襲われる。彼女のその笑みをどこかで見たような……。
(ううん、まさか。だって三辺さんと私はこの会社で初対面のはずだし……あり得ないよ)
軽く頭を振った私の耳に、三辺さんの言葉が入り込んできた。
「智基がまたお昼を摂ってないだろうから、買ってきたの。彼は好みがうるさいから……」
あ、まただと私は唖然とする。三辺さんはまた葛城さんを名前呼びした。でも、もうすぐ別の人と結婚するのに、こんなにも大勢の人が居る前で? と信じられない気持ちでいると、加藤さんがフォローのように付け加えた。
「さすがですね、三辺さんは。同じ大学の先輩後輩だから気心も知れてるってことでしょう」
(同じ……大学……)
加藤さんの説明に、ほっとしたのかもっと気になったのか。自分でもよくわからない気持ちになる
「当時から智基は孤高の一匹狼で自分自身にも関心が薄い人だったから」
三辺さんはそう告げて、手にしたトートバッグを軽く掲げて見せた。
「だから、周りが気をつけないと丸1日食べないってこともザラだから。無理にでも食べさせなきゃね」