クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
夕食と家事を済ませた後、チョコと戯れながら読書をすることが最近の習慣になってた。
家主である葛城さんの部屋に居座るのは図々しい気もするけれど、なぜかこの部屋はすごく落ち着いてリラックス出来る。
(あ、これ面白そう)
ふと英語のタイトルに惹き付けられて手に取ってみた。もちろん日本語訳ではあるけれど、あまり知らない海外作家の作品だから物珍しくて。
相当読み込んだのか、その本はかなり古びて紙が傷んでる。そっと捲ってみれば、内容は恐竜を巡るお話で。けれど何だか面白そうだから、寝物語に借りようと決めて二冊を本棚から取り出して気付いた。
隣に同じタイトルのDVDがあって、本を抜いた後の隙間の奥に小さな恐竜のフィギュアが置かれていると。
あまり恐竜に詳しくない私でも知っている、ティラノサウルスだった。
(なんでこんな場所に……?)
これはみんな、普段だったら目につかない書架の高い棚にあった。私も椅子を借りたから気付いた訳で。私より背が高い葛城さんでも、手を伸ばさないと届かない位置にあった。
映画のDVDを買うほどなら、きっと葛城さんは恐竜が好きなんだ。今まで彼の趣味らしい趣味を見つけられなかった私は、その意外な面を見つけて何だか心が浮き立った。
もしかしたら私だけが知ってる……なんて。そんなバカみたいな妄想は、今日見た光景ですぐにぺしゃんこになる。
“ちゃんと食べた?”と訊いた三辺さんに“ああ”と答えた葛城さん。彼は一瞬……またあの切ないような眼差しで、彼女の後ろ姿を見た。
(私がどれだけ頑張ってご飯やお弁当を作っても……三辺さんが買ってきたコンビニの軽食にすら敵わない……)
葛城さんのなかでどれだけ彼女が大切か、改めて思い知らされた気がした。