クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
もう、勝手なことはやめよう。
私の気遣いなんて所詮余計なお世話ってやつで、きっと葛城さんには負担になってたんだ。
だから、チョコの散歩をする前に用意した朝食用のプレートは一人分のみ。チョコを佐藤さんご夫婦に預けた後にダイニングテーブルを見たら、やっぱり手付かずなまま。
玄関にもう靴は無かったから、出社したんだ。朝6時なんてかなり早い時間に。昨夜は午前様だったのに……睡眠すらきちんと取ってないんじゃないかと思う。
さすがにここまでの激務だと、過労で倒れないかと不安になる。
彼が恩人だからという以前に、純粋に人として心配だった。
(なにかスープとか野菜ジュースとか……コンビニで買って渡そう)
私が作ったものはダメだけど、コンビニものなら受け取って貰えるかも。そう決めた私は、急いで朝ごはんを食べて支度を済ませる。
ふと思い付いて最近編んだマフラーと膝掛けもカバンに詰めて、アパートを急いで飛び出した。
会社に着いたのは午前7時ちょっと過ぎ。8時半が業務開始時間だから、珍しく早いねと守衛さんに挨拶されてしまった。
「あの……葛城課長は」
「ああ、今日も一番乗りだったよ。昨夜も遅いみたいだったけれど、青い顔して大丈夫なのかねぇ」
呑気な守衛さんの言葉に、(やっぱり体調が悪いんだ)という思いが巡る。コンビニの袋を握りしめた私は、エレベーターに飛び込んで逸る気持ちで階数のパネルを見上げた。