クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
(いた……)
控えめな照明の中、葛城課長はいつもと同じように定位置でディスプレイを睨み付けてる。
昨日先に帰った時と全く同じ光景だけど、ちゃんと服とネクタイは着替えられてる。シャツもパリッとしているし、髪の毛もきっちりセットされていて一分の隙もない。
いくら忙しくても身だしなみや清潔感に配慮するのは流石だけど……。
(だけど……)
遠目から見ても明らかなほど、顔色が悪い。それに、昨日より咳がひどくなってた。
これ以上、黙って見ていられない。
以前葛城課長からは“職場でプライベートは口にするな”と釘を刺された。でも、部下としても今のまま見過ごすのは嫌だった。
コンビニのビニール袋を手にした私は、よし、と拳を握りしめて入り口からまっすぐに葛城課長のもとへ向かう。そして、無言なままトンとそれを彼の机に置いた。
「おはようございます、葛城課長」
「ああ、おはよう……だが」
無愛想な葛城課長も一応挨拶は目を向けてくれる。けれど、それが胡乱なモノを見る目付きでビニール袋をペンで指した。
「これは一体何のつもりだ?」
「差し入れです」
「要らない。持っていけ」
「い、嫌です」
キツイ口調と瞳ででキッパリ断られ、身体が揺れるけれど。両手をお腹の前で握りしめ瞳に力を込めて彼を見据えた。
「葛城課長の……お体が心配なんです。どう見ても良いとは言えないじゃないですか」
「……自分の体調管理も仕事のうちだ。心配など要らない」
「嘘です! だって昨日よりひどくなってるじゃないですか」
叫ぶように彼に詰め寄る私に、ダン!とファイルを机に乱暴に置いた葛城課長は、私を鋭い目付きで睨み付けてきた。
「プライベートには口を出すなと、私は言ったはずだな?」