X





それが、俺の人生の中で最大の間違いで、最大の幸運だったと、今となっては思う。


突然現れた制服姿の俺に彼女は一瞬目を瞬かせたものの、すぐに愛らしい笑顔を浮かべると「お兄さんがこの公園を通ったあと、ちゃんと帰ってるよ」と答えた。

俺にはその意味が最初よくわからず、どういうことか質問すると

「お兄さんが来たらもう帰らなきゃいけない時間だっておもうんだ。せつね、ブランコがすきで真っ暗になっても気づかないみたいなの」

彼女は眉を八の字にして困ったように笑う。


「お兄さんも、ブランコすき?」

なんて答えようか迷った俺に気づいたのか、話を切り替えた彼女に、知らぬ間に俺は頷いていた。

「そっか、同じだね!お兄さんはいつも遅いけど学校?」
「部活帰りなんだ、君はいつも学校帰りずっとここにいるの?」


ずっとこの時間まで公園にいるとしたら、と考えると少し心配になってしまう。



< 56 / 64 >

この作品をシェア

pagetop