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「せつ、おまつり来たの久しぶり。楽しい、ありがとうお兄ちゃん」
りんご飴を持った彼女がにこにこと笑う。その笑顔がどうしようもなく可愛いと思った。
「ねえ、セツナ。来年は誰と来るの?お祭り」
「ええ、そんなのわかんないよ?」
「誰と、きたい?」
来年になったら俺じゃない誰かを誘って、その小さな手で誰かの手を握って、その笑顔を向けたりするのだろうか。
「そうだなあ、せつね、中学生になったら友達たくさんほしいんだ。だから、いっぱい友達連れて来たいな、あ、お兄ちゃんも一緒に来ようね」
「俺も?」
「うん!お兄ちゃんもせつの友達だもん!」
ああ、眩しい。
その眩しさが憎くてしょうがない。
そして、その憎さが愛おしくて、愛おしくてたまらない。
「そっか、それは嬉しいな」
「へへ」