X



ありがとう、と優しい声でお礼を言うと、セツナは顔を隠すように下を向いて頷いて。思わず俺はセツナの小さな手をぎゅっと握りしめた。

「ほら、おいで。もうすぐ花火が始まる」

握りしめた手を、いつか聞いた花火がよく見えるという場所へと導いていく。
セツナは俺の手を振りほどかない。俺の行く場所に疑いもせずついてくる。

馬鹿なセツナ。

きっと花火が終わったあともセツナは疑うこともなく俺についてくるんだろう。


< 63 / 64 >

この作品をシェア

pagetop