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「はい、ここがよく見えるんだって。あともうすぐで始まるよ、花火」
「ありがとう、お兄ちゃん。今日すっごく楽しい」
祭りの灯りがセツナの顔を照らす。赤く照らされた少し大人びたセツナの顔は、少し、危うい。
花火の開始のアナウンスが入り、セツナは少し赤く光った目をきらきらと輝かせる。
花火始まるって!、俺を振り返り笑う。
花火に気をとられている彼女すら腹立たしいと思う俺は狂っていると思う。
俺に向けられてる笑顔すら、
潰したいなんて。
彼女を閉じ込めて、彼女を悲しめることを望んでいるのだからもうどうしようもない。
好きな女の子が笑っていればいいなんて、思えないよ。
好きな女の子が俺の目の前に立っていれば俺はそれでいい。どこかで笑っているなら目の前で泣いていてほしい。
芯から芯までねじ曲がった俺の思考は、もう止まらない。セツナですら、俺を正義に導くことはできないだろう。
ドン!と空を揺らして、火花が散っていく。
花火が始まったらしい。
きっと俺はセツナが見たいと言わなければ、こんなもの気にもとめなかっただろう花火。
もう見ることは、ないだろうな。
「すごい!せつ、こんな近くで花火見たの初めて!すごいきれい」
きゃっきゃっとはしゃぐセツナ。
セツナがこんなに目を輝かせて笑うところを見れるのはこれが最後かもしれないと思う。
俺は、セツナから全てを奪うのだから。