氷の華
プロローグ
灰色な空からでも、真っ白な雪が降ってくるから不思議だ。


スモークフィルムが張られたリムジンの窓に付き、一瞬で溶けていく雪。


黙っていても降ってくる雪は、俺の目にはゴミにしか映らない。


ティッシュ配りのバイト。暇を持て余してそうな学生。コンパに向かう若者の群。


外食にでも出掛けてきた親子連れ。駅に急ぐサラリーマン。既に何処かで呑んできた酔客。


制服から着替えたOL。家に帰る者。出掛けの者。何をするでもなく流浪する者。


俺の中では、全て人間というカテゴリーに収納される。


それ以上でも、それ以下でもない。
< 1 / 270 >

この作品をシェア

pagetop