氷の華
何とか立ち上がってドアを開けると、其処には柿沢店長が立っていた。


「さっき言い忘れたんですけど、休む場合や遅刻になってしまう時は、社長の方に連絡を入れて下さい。それ以外の雑用は、遠慮なく私に言って下さい。」


「あ…それ、今電話で言われました。」


「そうでしたか、じゃあ私はこれで。」


軽く頭を下げた柿沢店長の姿は、ゆっくりと閉まるドアに消されていった。


閉じられたドアが、此処は孤独の空間だと、心細い気持ちに拍車をかけていくように感じる。


閉じたドアを開き、エレベーターに乗り込もうとしている柿沢店長を呼び止めた。


「どうかしましたか、蘭さん?」


「あの、行きたい場所があるんですけど、良かったら乗せていって貰えませんか?」
< 115 / 270 >

この作品をシェア

pagetop