氷の華
「有り難う御座います。」


ママの香りを誉められた事が、自分の事のように嬉しく感じる。


小さい頃から、ママに抱きつくと鈴蘭の香りにも抱き締められたようで、私には凄く安らぐ香りだった。


ママのお店から少し離れると、辺りに極彩色の光を放つ、一件のお店の前を通り過ぎた。


電飾鮮やかな看板に書かれている文字は、見なくても分かる。


私が中学に入学した年の夏にオープンした、中型キャバクラ店の[fairyland]。


そして、[fairyland]がオープンしたその日から、ママのお店に客足が遠退いていったんだ。


英語を習いたてだった私は、真新しい英和辞書を片手に、その意味を密かに調べた。
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