氷の華
一分もかからずに戻ってきた柿沢店長は、細身のシルバーに輝くライターを手渡してくれた。


ズシリと重いその感触に、値が張るものなのだろうと思った。


「どうぞ。」


「有り難う御座います、助かりました。」


ちょこんと下げた頭を戻すと、それを見届けたように柿沢店長はミーティングへと向かって歩き出した。


私も手渡されたシルバーのライターを握り締め、その後を付いていく。


「あ、そうそう、大事な事を二つばかり伝えなければならなかったのに、すっかり忘れていました。ミーティングの終わり頃に蘭さんを紹介しますので、何か一言ぐらい考えていて下さい。」


一言か…当たり障りの無い方が良いよね。


私は、さっき流亜さんにした挨拶の内容を頭の中で思い出していた。
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