氷の華
口にくわえたマルボロの穂先に、柿崎がライターを近付ける。


小気味良い金属の衝突音が室内に広がり、デュポンのライターは穂先から離れていった。


天井にあるビルトイン式の空気清浄機に、紫煙が吸い込まれていく。


一筋の紫煙が、うねりながら立ち上る。


直立不動でデスクの脇に居る、柴山と柿崎の二人を手で払い、業務に戻した。


ドアの前で一礼し、二人は社長室を出ていった。


音もなく閉まったドアが、店内から聞こえてくる嬌声とBGMを遮断する。


指先でマルボロの灰を落とし、系列店の先日分の報告書に視線を落とした。
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