氷の華
「い、いらっしゃいませ。」


俺の後ろを追うように付いてきた新人のボーイよりも、この世界に入って数年経っているであろう長身のボーイは、一目で俺に気付いたと見える。


だが、緊張と狼狽えが表情に出るようでは、まだまだ経験不足だ。


「失礼ですがお客様、当店では同業の方をお入れする事は出来ませ…。」


「総括本部長の田辺から招待を受けた。そっちから呼んでおいて、入店拒否は出来ないだろう。」


長身のボーイに最後まで言い切らせなかった事で、ペースは俺の元にある。


「しょ、少々お待ち下さい。」


手振りでこの場から動かぬようにと言われたが、気にせず店内へ足を進めていく。
< 141 / 270 >

この作品をシェア

pagetop