氷の華
俺と同じ歳で統括本部長と言えば聞こえは良いが、俺に言わせればそれだけだ。


所詮は、何れ黒谷から全てを譲り受けようとしているハイエナにすぎない。


他人が築いたものを譲り受ける事に、何の価値があるのか俺には理解出来ない。


その価値観の違いが、俺と田辺の現状を物語っている。


田辺が俺を呼んだ理由も、その目論見も分かっていたが、今は素知らぬ顔をしておいた方が良い。


化かし合いも、楽ではない。


「会長からの言伝だ。自分の下に居た人間が、同じ風景を見下ろせる場所に来るのは我慢がならないとさ。ライバル店のオープン前に、宣戦布告って事だ。」


俺を呼ぶ為の切っ掛けを、如何にもと言った風に話す田辺に、心中では冷笑を浴びせていた。
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