氷の華
「俺としても、お前が目の前をちょろちょろ動き回っているのは気にくわない。この街のキャバクラ店は［whiteｰcastle］が、黒谷カンパニーがトップなんだよ。」


昔から良く回る口だと思っていたが、それも変わってはいないらしい。


変わったのは統括本部長という地位と、眼鏡のフレームだけ。


俺を見て言ってはいるが、田辺の言葉は俺の隣に座るキャストと、長身のボーイに向けられたものだ。


ウチと黒谷カンパニーの力の差は、田辺も良く知っているはずだ。


店舗数ではウチの方が一件少ないが、総売上は肩を並べる所かウチが追い越している。


それでも黒谷カンパニーの方が上だと言ったのは、これから始まるであろう熾烈な戦いを前に、ホールスタッフとキャストに安心感を与えようとしているからに他ならない。


田辺の変わった点の一つに、打算的な考え方をするようになったと付け加えておく。
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表紙・目次

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