氷の華
「俺もこれ以上お前の長話しに付き合うほど暇じゃないんでな、最後に一つだけ言っておく。」


自分が喋った事の全てを長話しと片付けられた事に、田辺は怒りを堪えながら眉間に皺を寄せた。


「なんだ。」


身を乗り出してくる田辺を前に、十分な間を空けて口を開いた。


「お前と俺は対等じゃない。次、俺に何か言いたい時は、同じ土俵に上れてからにしろ。」


深く吸い込んだ煙を吐き出し、マルボロを灰皿に捨てて立ち上がった。


顔を紅潮させて怒りに身悶えしている田辺の顔など、見る必要も無い。


ソファから立ち上がり歩き出した俺の背中に、追い縋るような田辺の悪足掻きが張り付いた。
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