氷の華
八枚の報告書を読み終えた頃、柴山がドアをノックして社長室に入ってきた。


「失礼します、愛子を連れてきました。」


「そうか。」


緊張した面持ちの柴山とは違い、小柄な愛子は笑顔を張り付けて後に続いてくる。


当然、その笑顔も演技の内。


何故俺に呼ばれたのかは、当の愛子が一番良く分かっているはずだ。


内心では、柴山以上に緊張しているだろう。


それこそ、肉食動物を前にした、小動物のように…。
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