氷の華
だが、この業界を好きになれないという点は、あの頃から変わっていない。


金を、力を手に入れられたのが、奇しくもこの業界だったと言うだけだ。


新崎がドアを開いて待っているリムジンに、夜空を仰ぐのを止め乗り込んだ。


こうして昔の事を思い出している所を見ると、田辺の長話しより悪足掻きの方が効果的だったと見える。


肝心の化かし合いで負けているようでは、それも意味を成さないが。


「社長、行き先は[ミルキィ]で宜しいでしょうか?」


「いや、道の途中だから[fairyland]の様子を見ていく。」


分かりましたという新崎の返事を聞き、書類に目を通そうと身体をシートに預けた。
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