氷の華
中性的な顔立ちの桃城は、今年で三十一歳という年齢よりも若く見える。


柿沢と並んだら、間違いなく柿沢の方が年上に見られるだろう。


「そうだと思ってるから、[fairyland]には中々顔を出さないんでしょう?」


系列店全てのスタッフの中で、桃城だけが唯一緊張せずに俺と話せる人間だった。


それだけではなく、柿沢のように無表情になっていくスタッフが格段に多い中で、桃城だけが働き始めた頃と変わらぬ表情をしている。


誰からも好かれるような、人懐っこく少年のような笑顔が常だ。


だが当然、そんな理由で店長という地位に置いている訳ではない。


柿沢が努力を惜しまない人間だとすれば、桃城は天性でのし上がった人間だった。
< 152 / 270 >

この作品をシェア

pagetop