氷の華
俺の下で店長を任せているのだから、柿沢が物覚えの悪い人間だという訳ではない。


この桃城が、普通の人間とはかけ離れた才能を持っているとしか言い様がなかった。


今の柿沢の歳より五年も早く店長の地位に上り詰め、任されている[fairyland]の収支は、オープン以来の八年間で落ちた事がない。


例えるなら、早く走る為に生まれてくるサラブレッドと同じ。


理屈ではなく、潜在的に備え付けられていたものだ。


オープンしてから数年で、周りにある同業店を根刮ぎ閉店に追い込んだのは、紛れもなく桃城の手腕が成せる技だった。


「その通りだ。」


神林を付け回しにし、桃城と二人で社長室に向かう。


歩きながら店内を見渡してみるが、桃城らしく細部まで行き届いていて文句の付けようがなかった。
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