氷の華
[ミルキィ]の社長室と同じ作りだが、元々はこの[fairyland]の社長室の方が先に作られたものだ。


「未だ[ミルキィ]に掛かり切りですか?」


デスクチェアに座り、マルボロを口にくわえた俺に、ライターの火を差し出しながら桃城が口を開いた。


「新店舗がオープンするまでは[ミルキィ]が一番新しい店だからな、軌道に乗ってはいるが未だ目が離せない。[fairyland]に変わりはないか?」


マルボロに火を付けた流れで、自分のラークにも火を付けた桃城が、溜め息に似た煙を宙に吐き出した。


二つの違う香りのする煙が混じり合い、天井の空気清浄機に吸い込まれていく。


「報告書で出した通り、何事もなく順調ですよ。何か問題が有るとすれば、順調すぎて退屈な点ですかね。」


俺の前で堂々と煙草を吸い、順調な経営状況を退屈だという人間など皆無だが、実績を上げていれば何も問題はないという事だ。


この世界は、年端も碌にいかなかろうが、経験が足りなかろうが、自分の力を金に換えられる奴が強い。
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