氷の華
客席からは余り見えないようになっている待機用テーブルだけど、ここからはホールの様子が良く見える。


初出勤予定だった時に見た、ゴールドのドレスを纏ったグラマラスな人は、どのテーブルを見ても見つける事が出来なかった。


きっと、同伴出勤してくるのだろう。


私と一番歳が近いホールスタッフの伊藤君は、さっきから慌ただしそうにホールと厨房を行き来している。


チャームやアツシボの準備と、アイスチェンジの声がかかる度に忙しそうで、待機用のテーブルから見ると羨ましく見える。


「蘭さん、八番テーブルに顔見せに行って下さい。」


待機用のテーブルに顔を出した柿沢店長は、抑揚なくそう言うと直ぐに姿を消してしまった。


一気に緊張が増し、身体が強ばるのが分かる。
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