氷の華
「ホールの様子を伺うのに夢中で、足がもつれましたか?気をつけて下さいよ。」


割れたグラスの破片を拾っている柿沢店長の頭上に、態とらしい柴山マネージャーの声が降り注がれた。


「ちょっと待って下さいよ!今のは柴山マネ…。」


「蘭さん、蘭さんは十二番テーブルに行って下さい。」


「だって今のは…。」


懇願するような瞳を柿沢店長から向けられ、それから先の言葉を飲み込んだ。


けど、私は確かに柴山マネージャーが足を引っかける所を見たんだもん…。


「どうした。」


行き場もなくなり、仕方なく言葉を飲み込んだ私の前に、冷たい声を放った氷藤社長が立っていた。
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