氷の華
第九章…氷
「失礼します。」


柿沢の声に書類をデスクの上に放り、視線をドアに向けた。


パッケージから引き抜いたマルボロを口にくわえると、真っ直ぐデスクに進んできた柿沢が、左手を添えながらライターの火を翳した。


肺深くに煙を吸い込む。


吐き出した煙はそのまま天井へと上り、空気清浄機に吸い込まれた。


「蘭の様子はどうだ。」


「初日にしては硬さもありませんでしたし、お客様からのクレームもありませんでした。まずまずの滑り出しだとは思っています。」


まずまずか…。
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