氷の華
顔には出さなかったが、初日から上出来を期待していただけに、まずまずという柿沢の言葉が引っかかった。


とは言え、この世界に飛び込んできた新人の蘭が、俺の予想していた上出来をクリア出来ないであろう事は分かっている。


長年この世界に身を置いてきた、ベテランキャストでさえも不可能だろう。


それを踏まえれば、予想通りだとも言える。


だが正直な所、焦りはあった。


新店舗のオープンまで、蘭をそれなりのキャストに出来なければ、脳内で描いている絵図は空想で終わってしまう。


時間がない。


時間との兼ね合いが頭を悩ませていたが、そればかりは俺でもどうしようもなかった。
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