氷の華
月一で通ってくれていた客なら、一万八千円。月二で三万六千円。週一の客ならば、店に与えた損失は七万二千円となる。


それが二ヶ月、三ヶ月と続けば、当然の如く倍々の損失となっていく。


自分に原因があるにも関わらず、フリー客を回してくれないからだなどという、下手にプライドだけ一人前な奴はヘルプ要員にも使えない。


愛子に[ミルキィ]で働かせる理由など、何処を探しても見つからないという訳だ。


「失礼します、柿沢を連れてきました。」


「死ね!冷血人間!」


俺に向けられた罵声に驚き、目を丸くしている柴山と柿沢を突き飛ばすように、愛子はドレスを翻した。


どんなに着飾って身嗜みを繕おうと、一枚仮面を剥げば美しく装ったキャストもこんなものだ。


「あぁそれと、もし次の店が見つかっても、[ミルキィ]で働いていたとは言うなよ。ウチの名が汚れる。」
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